虫歯や歯周病にかかる前に「予防」のために定期的に歯医者に通う方が増えています。毎日の自宅での歯みがきに加えて、歯科医院で定期健診(メンテナンス、歯のクリーニング)を年に3~4回受けて頂くと、虫歯や歯周病になるリスクを減らすことが出来ます。
虫歯や歯周病は悪化させてしまうと歯を失うことに繋がります。そして近年では、歯周病は心臓病や脳卒中などの全身疾患の原因になっているということがわかってきました。そのため歯を失って噛めなくなってしまう前に、虫歯や歯周病から天然歯を守りましょう。健康な歯と身体を守るために、毎日の「セルフケア」だけでなく「プロフェッショナルケア」を受けるようにしましょう。
1.問診と歯茎のチェック
歯茎の炎症の状態を歯科衛生士がチェックします。口臭がある場合は虫歯や歯周病の可能性があります。同時に患者さんから、痛むところなどはないか、日頃からご自身で気になっていることや困っていることがないか、お話を伺います。必要に応じてレントゲン撮影を行います。
2.歯茎の検査
歯科衛生士が専用の器具を使って歯周ポケットの深さを測ります。歯周ポケットとは歯と歯ぐきの間の溝の事で、歯周ポケットの深さが歯周病の程度の目安になります。
歯茎の出血があるかどうか、歯がぐらついていないかも確認し、その程度を数値で記録します。今後はこの数値の維持または改善を目指してケアをしていきます。
歯垢、歯石のつき具合、歯茎の炎症の有無、歯周ポケットの深さなどの患者さんの口腔内環境について、歯科衛生士が患者さんにご説明します。
3.歯垢の染め出し
歯垢が染まる薬剤を歯に塗り、歯垢がついている部分と染まっている色をチェックします。患者さんにも実際に歯が染まっているのをご自分の目で鏡で見ていただきます。
染まっている部分が多く歯みがきで歯垢が落としきれていない患者さんには、普段どのようなセルフケアをしているか、どんなものを使っているか(歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなど)を患者さんにお聞きします。
4.歯のクリーニング・歯石取り
エアフローを使用して染まっている部分(歯垢)をきれいに落としていきます。歯石や着色による汚れも取っていきます。
エアフローとは?
エアフローは、歯のクリーニングを行う機械の一種で、超微粒子パウダーをジェット噴射で歯に吹き付けると同時に水で洗い流し、歯の汚れや歯垢を落とてきれいにします。軽い着色汚れならホワイトニングをしなくても、エアフローでのクリーニングのみでかなりきれいになります。
また、歯周ポケット内の虫歯や歯周病の原因となる細菌を除去する効果も高く、歯周病治療にも用いられます。
5.フッ素塗布
最後にフッ素塗布(またはフッ素のうがい)を行います。フッ素は虫歯を防ぎ、歯質の強化に効果があります。フッ素のあと30分程度飲食を控えて頂きます。
ご自宅でのケアの方法など、気になる点があれば担当の歯科衛生士におききください。
定期的に歯科検診を受けて頂くことにはどんなメリットがあるのでしょうか。それは「虫歯や歯周病を早く見つけて、早期に治療をすることが出来る」ということにつきます。具体的には下記のようなメリットがあります。
- 虫歯や歯周病などを早期発見できる
- 虫歯、歯周病のリスクを減らすことができる
- 虫歯や歯周病が進行して悪化する前に早期治療が出来るので費用を抑えられる
- 天然歯を長く健康に保つことができる
歯の定期検診を受けていただくことのメリットを更に詳しくご説明します。
虫歯、歯周病などを早期発見できる
虫歯は初期の段階ではほとんど痛みを感じません。歯周病もかなり悪くなるまで自覚症状がありません。そのため定期健診で虫歯や歯周病をなるべく早期のうちに発見することが重要です。
初診の段階でレントゲン撮影を行いますので、その時に虫歯になっている部分が見つかったら、定期健診とは別に治療の予約をお取りいたします。歯並びの悪い方は虫歯になるリスクが高いため、歯が痛くなくても虫歯になっている場合があります。定期健診で軽度の虫歯を発見することが出来ます。
また、歯周病は歯茎のチェックで進行状況がある程度把握できますので、軽度の場合はすぐに治療を開始することが出来ます。
虫歯や歯周病の兆候がみられる場合は、歯科医師の診療をスムーズに受けて頂くことが出来ます。
虫歯、歯周病のリスクを減らすことができる
定期健診によって通常のブラッシングでは落とせない歯と歯の隙間や、歯と歯茎の間の歯垢やバイオフィルムや歯石を除去することが出来ます。
歯のクリーニングによって一時的に口腔内の細菌が減りますし、歯垢が残りがちな部分があれば、歯科衛生士がそれに気づいて患者さんにその部分を効果的に取るためのブラッシングについてお話しますので、定期健診を受けていない方と比べると虫歯、歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
虫歯や歯周病が進行して悪化する前に早期治療が出来るので費用を抑えられる
虫歯が悪化してから治療すると、神経を取らなければならなかったり、前歯の場合には高価なセラミックの被せ物をつけなければならなくなります。
その治療のためには通院回数も増え、費用はかなりの金額になりますが、定期健診で虫歯や歯周病のリスクを減らすことで、将来支払う治療費を抑えることができます。
天然歯を長く健康に保つことができる
永久歯は削ってしまえば二度と元には戻りませんし、歯を失った場合はもっと事態は深刻です。義歯をセラミックで作れば審美性はすぐれたものが出来ますが、噛み心地となると天然の歯に勝るものはありません。
そのため出来る限り天然の歯を長く健康に使い続けるためにも、定期健診は歯の健康の為に欠かせないものです。
歯周病予防の為の定期健診
歯周病検診マニュアル(2015年厚生労働省)によると、歯周病検診の意義について、「歯周病は日本人の歯の喪失をもたらす主要な原因疾患である。」とした上で、「必要に応じて生活習慣の改善を行うことが発症予防及び重症化予防を進める上で重要であることから、歯・口腔の健康に関する生活習慣や基礎疾患を加味した歯科保健指導等を行うことが望ましい。」と記されています。
当院ではこれらの内容をふまえて、積極的に予防歯科診療を行っています。※当院は自治体による歯科健診は行っておりません。
歯科衛生士は口の中の粘膜をしっかり見ている
歯の定期健診は、歯を診てもらう健診と思われるかもしれませんが、実はお口の中の粘膜の状態をしっかりと診ています。お口の中は歯以外の部分のほとんどが粘膜で、漢方医学では「舌診」という言葉があり、お口の粘膜の状態を見ると、全身の健康状態までもわかるといわれています。
口の中の粘膜の種類
少し難しいお話になりますが、お口の中の粘膜は3種類に分かれ、それぞれに働きが違います。
- 咀嚼粘膜・・・歯肉や口蓋の部分の粘膜
- 被覆粘膜・・・唇や頬、舌の下側、喉の奥に近い軟口蓋の粘膜
- 特殊粘膜・・・舌の表面を覆う粘膜
粘膜の状態は色によって分類される
正常な粘膜の色はピンクですが、その他の色が見られる場合は何らかの疾患の可能性があります。
- 白・・・口腔カンジダ症、白板症、口腔扁平苔癬など
- 黒・・・色素性母斑、外来性色素沈着、悪性黒色腫など
- 赤・・・紅板症、多型滲出性紅斑、正中菱形舌炎など
- 黄・・・Fordyce斑、脂肪腫など
歯科衛生士が患者さんのお口の健康をサポートします
定期健診で歯垢の染め出しを行うことで、歯に残っている歯垢がはっきりと目に見えるようになり、何故歯垢が残ってしまうのかを患者さんご自身も一緒に考え、積極的に歯垢の除去をすすめていくことが可能になるよう、様々なお話をさせて頂きます。
虫歯になりやすい方、虫歯はないが歯周病になりやすい方など、様々なタイプの方がいらっしゃいますので、患者さんが実際にはどのタイプなのか。食事などの生活習慣ではどのようなことに気を付ければよいのか、お一人おひとりに合った内容のお話で、患者さんの口腔内環境を整えていきます。
このように、定期健診を受けていただくことで、患者さんの歯の健康を歯科医師、歯科衛生士がしっかりとサポートします。虫歯や歯周病になる前に、「大切な天然歯を守るために歯科医院に行く」ことをぜひ習慣づけて頂きたいと思います。
歯の定期健診の費用はいくらかかるの?
定期健診の料金は保険適用となりますので3割負担の方で1回3000円程度です。1年に3~4回来院していただき定期健診をお受けいただくと、年間にかかる費用は決してお安い額ではないかもしれませんが、健診を受けなかった場合には虫歯や歯周病のリスクが高まりますので、それらの病気にかかってしまった場合の治療費と比較すると、格段にお安い費用で済みます。
何よりも、天然の歯を長く保ち続けるために、ぜひ定期健診をお受けいただきたいと思います。当院は予約制を導入しており、初めて定期健診を受ける方のご予約はお電話で「定期健診希望」とおっしゃっていただくと、スムーズにお取りすることが出来ます。
まとめ
歯の定期健診は虫歯や歯周病の予防のために、歯周病検査や歯のクリーニング、歯石の除去などを行います。虫歯や歯周病を早期発見して悪化する前に治療し、歯を長く健康に保つことを目的としています。
保険適用ですので、1年に3~4回受けて頂くことをおすすめします。