こんにちは、ARTE DENTAL CLINICです。
今日は今年話題の国民皆歯科健診制度についてお話ししたいと思います。
現在、日本では
・学校保健安全法による、学校歯科健康診断
・健康増進法により、40・50・60・70歳の歯周疾患健診
学校歯科健康診断では、高校生までを対象とした歯科健診が義務付けられていますが、大学生は対象外です。そのうえ、社会人になると企業や自治体によって健診の制度は大きく異なります。そんな背景もあってか、歯科健診の受診率は低く、痛みなどの違和感があった時に歯科医院を受診するという人が大多数といわれています。歯の健康に対する意識は、決して高くないのが現状です。
そこで今回、
2022年6月7日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込まれたのが「国民皆歯科健診」です。これは、国民が年代問わず歯科健診を受けられる制度の実現を目指す方針です。全世代での歯科健診を生涯に渡って制度化することで、お口の健康を守ることを目的としています。
お口の健康を守るための運動として知られているものに「8020運動」があります。これは「80歳で自分の歯を20本残す」という運動で、1989年から当時の厚生省と日本歯科医師会によって推進されていました。しかし、歯科健診の受診を推奨はしていたものの、実際に受診するかは各々の意思に任されていました。
では国民皆歯科検診を行うことでどの様なメリットがあるのかお話ししていきたいと思います。
日本人では、40歳以上の約8割が歯周病の症状を持っているとされます。歯周病菌の感染によって歯周組織の炎症が進行し、口のなかの粘つき、歯磨きの際の出血、口臭、歯茎の腫れ、歯肉の痛みなどの症状が現れます。進行すれば歯が抜け落ちることもあります。最近の研究で、歯周病が誤嚥性肺炎、動脈硬化、心臓病、脳卒中、糖尿病、早産、関節リウマチ、アルツハイマー病などの病気と関係があることがわかってきました。
歯周病菌、毒素、炎症物質などが全身に運ばれる
歯磨きが不十分だと、歯垢(プラーク)や歯石が歯と歯ぐきの境目に繁殖します。プラークの中には、重量1mgあたり1億個の細菌が含まれ、細菌が作り出す毒素によって、歯肉に炎症が生じ、腫れたり出血しやすくなり、歯と歯肉の間の隙間(歯周ポケット)ができます。歯周病には、歯周病菌と言われる複数の細菌が関わっていると考えられています。歯周病菌の酵素や毒素は歯を支える歯槽骨を溶かし、歯がグラグラしてきたり、歯肉が下がってきたりして歯が抜け落ちたりします。そして、歯周病菌、菌の作り出す酵素や毒素、さらには歯周病組織で作られるサイトカイン(炎症を引き起こす物質)などが持続的な供給源となり、血管を通して全身に運ばれて、全身の疾患に悪影響を及ぼしていると考えられています。例えば、心臓の内膜に歯周病菌が付着すると心内膜炎を起こして、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めるとされます。また、歯周病による炎症で、プロスタグランジンと呼ばれる物質が体内で発生し、子宮を収縮させ、早産になる可能性も指摘されています。糖尿病や関節リウマチは免疫機能の低下から歯周病になりやすいといわれ、歯周病がこれらの病気を悪化させることもわかってきました。高齢者では、歯周病の罹患率が高く、口の中の細菌が肺に入り、炎症を起こすことで誤嚥性肺炎の発症につながります。
このように口腔内の細菌は様々な病気に直結します。早め早めの健診と予防で強い体作りをしましょう。
尚、国民皆歯科健診が開始されるのは3〜5年先だと言われています。